海外在住のご家族の中には、子供の将来を考えて帰国生入試で中学受験を検討されている方も多いのではないでしょうか。
筆者もかつて帰国生入試で中学受験を経験したことがあります。
帰国生入試による中学受験は、帰国子女だけの特別枠が設けられるわけなので、一般入試より容易に、いわゆる難関校に進学できる大きなチャンスを与えられます。
しかし、帰国子女の中学受験は、一般入試と受験資格の条件や内容が異なるため、それに対応した準備が必要です。
本記事では、帰国生入試で中学受験を検討されているご家庭に向けて、学校選びや入試対策に役立つ情報をご紹介します。
帰国子女の中学受験
一般入試で難関校に合格するためには、小学生の学習範囲を超えた内容や、深い思考力を問われます。
また、中学受験をする小学生が入塾する時期は、小3の2月が多いと言われています。
子供の立場から見ても、中学受験のために、長期に渡って時間的な拘束を強いることになります。
その点、帰国生入試による中学受験は、難関校に一般入試とは別枠でチャレンジできる貴重な機会であります。
帰国生入試は、帰国子女にとって大きなチャンスである一方で、熾烈な競争を勝ち抜いた一般生たちとは、これまで全く異なった文化や環境で育った帰国子女が、その学校に進学して本当に馴染めるのかを真剣に考えてあげることも保護者として大切なことです。
偏差値至上主義にならず、過去の帰国子女の受け入れ実績、国語や数学など帰国生が苦手とする科目のフォローアップ体制、帰国生の大学進学実績など、総合的に判断して、自分の子供に合った学校を選ぶべきです。
まだ幼さの残る小6という時期に挑む中学受験は、帰国生入試でも周りで支える大人の関わり方、考え方次第で、大きく結果が変わってきます。
帰国生入試の受験資格の条件
帰国子女枠で中学受験するためには、各中学校で定められた受験資格の条件を満たす必要があります。
一般的に、帰国生入試の条件は、下記の3つです。
- 帰国後の年数
- 海外での滞在年数
- 出身校の種類
帰国後の年数の条件は、学校によって差があります。
帰国後「3年以内」や「2年以内」を条件にしている学校が多いです。
海外での滞在年数も学校によって条件が異なります。
「1年以上」あるいは「2年以上」を条件としている学校が多い印象です。
しかし、学校によっては「3年以上」や「5年以上」を条件にしている場合もあります。
また、海外での滞在年数に関しては「継続」か「通算」なのか、規定が学校によって異なりますので注意が必要です。
出身校の種類は、「現地校」「インターナショナルスクール」「日本人学校」の3種類あります。
出身校の種類に規定を設けている中学校もありますので、受験勉強を始める前に必ず確認しましょう。
なお、帰国生入試の条件は学校や年度ごとに異なります。
学校のホームページや入試要項、窓口などで、受験資格を満たしているか確認することが大切です。
帰国生入試の受験科目
帰国生入試の受験者数は年々増加傾向にあります。
それに伴い、帰国子女を積極的に受け入れる学校も増加しています。
一般入試では、国語・算数・理科・社会の4科目入試が基本ですが、帰国生入試は幅広い種類の入試形式が実施されています。
例えば、海外生活の中で、日本の理科・社会まで学習することが難しい学習事情に配慮して、国語・算数の2科目入試や国語・算数・英語の3科目入試を実施している学校もあります。
4科目(国語・算数・社会・理科)入試
国語・算数・理科・社会の4科目で受験する場合、帰国生入試でも一般入試の受験者と同程度の学力が求められます。
一般入試と同じ日程、同じ問題で入試を実施し、合格の基準点のみ異なる設定をしている学校が多いです。
例)慶應義塾湘南藤沢中等部、早稲田中学校、早稲田実業学校中等部、本郷中学校、巣鴨中学校、城北中学校、豊島岡女子学園中学校、鷗友学園女子中学校など
2科目(国語・算数)入試
国語・算数の2科目入試は、社会・理科まで学習することが難しい帰国子女に配慮した入試形式です。
国語・算数のレベルも、一般入試より平易に設定している学校が多いですが、科目数が少ない分、競争は激化します。
例)渋谷教育学園渋谷中学校、広尾学園中学校(本科ほか)、聖光学院中学校、海城中学校、立教池袋中学校、学習院中等科、立教女学院中学校、学習院女子中等科、大妻中学校、共立女子中学校など
3科目(国語・算数・英語)入試
国語・算数・英語の3科目入試は、帰国子女に特化したバランス型の入試です。
帰国子女に対して国語・算数の学力だけではなく、英語の実力を求める学校が増えています。
難関校に合格するためには、英検準1級以上のレベルが必要です。
英語圏の出身者でも対策なしでは合格は難しい難易度に設定されています。
例)慶應義塾湘南藤沢中等部、渋谷教育学園渋谷中学校、成蹊中学校、広尾学園中学校(インターAG)、開智日本橋学園中学校、市川中学校、東邦大学付属東邦中学校、海城中学校、暁星中学校、洗足学園中学校(B方式)、白百合学園中学校など
1科目(英語+α)入試
英語圏の現地校、インターナショナルスクールに通学していた帰国子女に配慮して、英語に特化した入試を実施している学校もあります。
英検準1級以上の難易度の問題を解く必要があり、ただ英語圏の現地校やインターナショナルスクールに通学していただけでは解答することができない問題ばかりです。
また、面接(英語・日本語)やエッセイを併せて実施させることもあります。
例)渋谷教育学園幕張中学校、三田国際学園中学校、攻玉社中学校、洗足学園中学校(A方式)、頌栄女子学院中学校など
帰国子女の中学受験で求められる「英語力」とは?
現在、多くの学校が英語圏からの帰国子女の生徒を増やすために、英語を含めた入試を実施しています。
英語圏からの帰国子女を望む背景には、英語の授業のレベルが上がり一般生に対しても良い影響があります。
また、何よりも英語のアドバンテージがあれば、大学受験で成果をあげやすく、学校の進学実績を上げることができます。
英語の実力を積極的に評価する学校が増えていますが、英語圏からの帰国子女であれば誰でも合格できるわけでもありません。
難関校に合格するためには、英検準1級以上の英語力が必要だと言われています。
ただ英語圏の現地校やインターナショナルスクールに通学していただけでは、英検準1級レベルの英語力を養うことは不可能です。
英語を重視する学校の問題は、小学生のレベルを超えた時事問題と絡めて出題されることがあり、大学入試以上の能力が要求される場合もあります。
このように学校が帰国子女に求める英語力と、一般にご家庭が考えている英語力との間に大きな隔たりがあることが多いです。
帰国生入試は英語圏出身者が有利なのか?
英語力を重視する学校が増える中で、日本人学校からの帰国子女に期待する学校も多くあります。
一般生と同じように、国語・算数を含めた試験に突破できれば、海外で生活したハンデを跳ね返して、その他の科目に関しても十分にキャッチアップできるだけの能力があると判断することができるからです。
英語圏からの帰国子女の大きな悩みは、学校に入ってからの一般生との学力差です。
一般入試で合格を勝ち取った一般生の同級生と同じ教室で勉強していくためには、同等レベルの学力である必要はないまでも、その内容に通じている必要があります。
その点、日本人学校からの帰国子女は、一般入試と同じように4科目入試あるいは社会・理科を除いた2科目入試の受験者ばかりなので、入学後の一般生との学力差が少なく済み、十分にすぐキャッチアップして一般生を超えるポテンシャルがあります。
帰国生入試で中学受験をする場合の学校の選び方
帰国子女の中学受験を成功させるために、最も大切なことは学校選びです。
帰国生入試は学校よって受験科目が異なりますので、どの学校を受験するかによって勉強方法や受験対策にも大きく影響します。
また、帰国子女にとって、帰国後の学校生活はそう簡単ではありません。
帰国子女の生徒を入学後に、どのように成長させるのかは学校によって特色が異なります。
過去の帰国子女の受け入れ実績、国語や数学など帰国生が苦手とする科目のフォローアップ体制、帰国生の大学進学実績など、総合的に判断して、自分の子供に合った学校を選びましょう。
子供の学力や性格に合わせた学校選びをして、時間に余裕を持った受験対策をすることが帰国子女の中学受験で成功するために重要なことです。
偏差値が高い学校が、子供に合った学校とは限りませんので、色々な学校を見て志望校を選んでいただけたらと思います。
帰国生入試で中学受験をする際に、学校選びで注目すべき5つのポイントをご紹介します。
- 教育理念・校風
- 帰国子女の受け入れ実績・帰国生向けの学習フォローアップ体制
- 帰国生の進路
- 学校の分類
- 通学のしやすさ
教育理念・校風
帰国生入試に限らず、中学受験の志望校選びでは、各校の教育理念や校風を確認することが大切です。
それぞれの学校によって、教育方針にはっきりした個性があります。
偏差値が同レベルの学校でも、学校の雰囲気や先生、生徒のカラーは大きく異なります。
成功する学校選びのコツは意外にも個人の感覚です。
実際に学校を見に行って、「この学校の雰囲気が好き」や「なんとなく苦手な雰囲気の学校」という直感は正しいことがほとんどです。
学校選びで最もやってはいけないのが、偏差値だけを見て学校を選ぶことです。
偏差値で学校を選ぶということは、結婚相手を年収だけを見て選ぶのと同じだと言えばわかりやすいかもしれません。
偏差値は志望校を決める上で、一つの指標に過ぎません。
中学校の偏差値は毎年のよう変動します。
中学受験の業界では、「隔年現象」という言葉があり、一年ごとに受験倍率や偏差値が上下する現象のことを意味します。
人気が高い学校は翌年に偏差値が上がるので、多くの受験生が偏差値が上がったことを見て受験を敬遠しがちなり、その学校の偏差値は一転して下降しますが、その翌年には倍率が落ち着いたのを見てまた受験者が集まり、倍率と偏差値が再度上昇します。
帰国子女の中学受験で、一番に大切にすべきは子供の気持ちです。
親が気に入った学校でも子供の反応はいまひとつということはよくあります。
偏差値や親の考えだけで学校を選ばず、教育理念や校風などにも目を向ければ、親子ともに気に入る学校がきっと見つかるはずです。
帰国子女の受け入れ実績・帰国生向けの学習フォローアップ体制
帰国子女の受け入れ実績や帰国生向けの学習フォローアップ体制が整っているのかは、学校選びで非常に大切なポイントです。
例えば、渋谷教育学園幕張中学校(渋幕)は昔から帰国子女を受け入れていることで有名な学校です。
そのため、帰国子女の受け入れ体制が非常に整っています。
入学後に、帰国生に対して国語・数学の取り出し授業を実施しています。
その後、一般生の授業に参加しても問題ないと判断された時点で一般生の授業に合流する仕組みになっています。
また、成蹊中学校は、全国に先駆けて帰国子女の受け入れを開始し、1935年に海外勤務者子女のために特別学級が設置されました。
現在、中学1年に海外現地校、インター校出身者15名で構成される国際学級を設置しているほか、中高生の約2割にあたる人数の帰国生が学園生活を送っています。
アメリカの10スクール(テンスクール)を含む名門校への正規留学のチャンスや、世界各国からの留学生の受け入れ・学校訪問があり、帰国子女の生徒が活躍できる機会があります。
帰国生入試を実施する学校が増える中で、帰国子女を受け入れるだけで、その後のフォローが何もない学校もたくさんあります。
帰国子女だからと言っていつまでも特別扱いされることはよくありませんが、国内とは大きく異なる教育を受けてきた帰国子女にとって、とりわけ学習面はサポートが必要であることが多いです。
また、逆に海外での学習や生活を経験している帰国子女は、一般生には語学などのスキルがあります。
その良さを伸ばすことができる体制が整っている学校を選ぶべきです。
帰国生の進路
学校選びで、どうしても気になる要素が「進学実績」でしょう。
国内で生活してきた一般生と同様に、国内の難関大に合格して、国内企業に就職することを目指すならば、どんな学校に進学しているのか、難関校にどれくらい合格しているのかは、重要な情報の一つです。
しかし、せっかく海外で幼少期を過ごしたのだから、卒業後の進路も日本国内にこだわらず、幅広い可能性を示してあげたいと考えるのであれば、いわゆる進学実績だけを見るのではなく、帰国生が卒業後にどのような活躍をしているのかという点も含めて学校を選ぶべきです。
国内の難関校への進学指導に力を入れている学校は多いですが、海外の大学進学を含めたそれ以外の多様な進路を希望する場合は、学校側の指導や経験、ノウハウも必要になってきます。
学校の分類
中学受験で志望校を選ぶ上で、「大学付属校」に行くべきなのか、それとも「進学校」を選択すべきなのかは、必ず考えるべきポイントです。
大学付属校と進学校の大きな違いは、大雑把に言えば、付属校は入学した子供を「自分の大学に進学するのにふさわしい学生として育てる学校」であるのに対して、進学校は「よい大学に合格させるための学力をつける学校」です。
生徒を教育する目的が違いますから、受験生を選考する入学試験が異なるのも当然のことです。
進学校では、将来の大学受験に対応できる生徒を集めなければなりません。
そのため、より難易度の高い入学試験になりがちです。
それは、中学入試の時点で、大学入試に耐えうる高い学力があるかどうかを判断する必要があるからです。
さらに、論理的思考力があるかどうかも試されます。
一方で大学付属校は、同じ偏差値帯の学校であっても、進学校に比べ基本問題を重視する傾向があります。
また、設問が広範囲に渡るので、子供に広い視野を求める出題となることが多いです。
様々なことに興味を持っている生徒を求める傾向にありますので、時事問題や世界各国の文化や習慣に関する問題も出題されます。
受験勉強の知識に限らず、幅広い教養、関心を持つ必要があります。
通学のしやすさ
学校選びでは、通学のしやすさも大切なポイントです。
海外での生活が長い場合、日本の満員電車に驚くケースも少なくありません。
まずは、電車通学に慣れる必要があります。
また、学校までの通学時間があまりにも長いと、勉強や部活動も大変になってしまいます。
自宅から通学しやすい学校が見つかれば良いですが、見つからない場合は学校に近いエリアへの引っ越しを検討しましょう。
帰国子女の中学受験の準備
帰国子女の中学受験が一般入試と大きく異なる点が「試験日」と「受験科目」です。
一般入試は2月1日~3日の間に実施されることが多いの対して、帰国生入試は一般入試よりも1~2ヶ月早く実施されます。
また、受験科目も一般入試では国語・算数・理科・社会の4科目入試が基本ですが、帰国生入試の場合は国語・算数・英語の1〜3科目と面接を実施する学校が多いです。
国語・算数の2科目、英語のみ、国語・算数・理科・社会の全教科、日英の作文など、学校によって受験者に求める受験科目が異なります。
故に、帰国生入試で中学受験にチャレンジする場合は、早めに学校を決めて受験対策を始めることをおすすめします。
帰国子女の中学受験は、一般生の中学受験以上に保護者の方のサポートが必要です。
特に子供は、慣れない土地での受験勉強や中学受験のプレッシャーを感じています。
学校選びや情報収集など、中学受験のための準備は保護者の役割です。
しっかり準備した上で、子供が勉強に専念できる環境を整えてあげましょう。
まとめ
帰国子女の中学受験は準備が全てです。
まずは、帰国生入試を実施している学校の中から、気になる学校を選びましょう。
受験資格はあるのか、子供が受験科目に対応できるのか、中高一貫校か大学付属校か、そして何より子供に合う学校なのか、確認事項は多岐に渡ります。
学校選びができたら、一時帰国のタイミングで実際に学校を見学して、受験に関する情報を集めることが大切です。
帰国子女の中学受験では、一般入試と異なり、海外生活の中で、日本の理科・社会まで学習することが難しい学習事情に配慮して、国語・算数の2科目入試や国語・算数・英語の3科目入試が実施されることが多いです。
筆記試験だけではなく面接が実施する学校がも多くあります。
受験する学校によっては、英語のスピーキングテストもありますので、英語での対応力が求めれます。
逆に、海外生活が長いと日本語での面接に不安を感じることもあるはずです。
海外在住時から通信教育やオンライン学習で受験対策をする必要があります。
不安があるならオンライン家庭教師でのマンツーマンレッスンもおすすめです。
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